【出産手当金の計算方法】標準報酬月額とは?よくある誤解も解説
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産休育休の相談をしているベンゾーです。
出産手当金の金額について先日こんなツイートをしました。
この記事ではツイート内容をさらに詳しく解説します。
こんな方向け
- 出産手当金がどのくらいなのか気になる
- 調べても専門用語ばかりで、正しく理解できてるか不安
- 詳しい計算方法も、ざっくりした金額も知りたい
産休前に休みたいけど、出産手当金が減ったりしちゃうのかな?
出産手当金の金額って実際はシンプルなんですが、専門用語があるせいで誤解している方がいます。
「産休まで休みたいけど、もらえるお金が減ったらどうしよう・・・」って相談をされる方も。
給料2ヶ月分くらいもらえるから、うっかり減らしたくはないですよね
そんな心配を無くすために、この記事では「出産手当金の金額の仕組み」を誤解の多いポイントと合わせて解説していきます。
ポイントは以下の通り。
- だいたいいくらもらえるのか?
- どんな計算方法?
- 誤解されてるポイントは?
- 金額が増えるケース、減るケースはある?
この記事を読めば、産休までの間になにを意識して過ごせば良いのかがわかります。
「イチイチ記事を読んでる暇が無い!」って方は、運営者のベンゾーに直接相談できるサービスもやっています。
0円から対応しますので、気になる方は「【悩み丸投げOK】育児休業給付金の相談をベンゾーにする方法」をご覧ください。
この記事の情報は・・・
- 厚生労働省管轄の育児・介護休業法
- 雇用保険手続きの手引き-育児休業給付について
- 雇用保険に関する業務取扱要領-育児休業給付関係
- 雇用保険に関する業務取扱要領-一般被保険者の求職者給付
- 法令検索サイトe-gov-育児介護休業法
を要約した内容になっています。
【出産手当金とは】産休中に減った給料をカバーしてくれるお金
そもそも出産手当金とは?って方のために簡単に説明。
産休中は一般的に給料が出ません。しかしそれでは生活が厳しいので、減った給料をカバーする意味で健康保険からお金が出ます。
このお金を出産手当金といい、健康保険に加入している方が対象となっています。
その他の概要は「【出産手当金とは】1000件以上回答した専門家が徹底解説」で説明するので、この記事では「出産手当金の金額」について解説していきます。
【出産手当金の金額】具体例を使って解説!
まずは出産手当金の金額がどのくらいなのか、簡単にできる計算方法を使って解説します。
一般的な方であれば、この計算方法で十分対応できます。
なお、「タイミン」を使うと、出産手当金と育児休業給付金の金額、もらえるタイミングや会社に「まだですか?」って言えるタイミングを簡単に計算できます。
給料の2ヶ月分+αくらい|月給30万円なら約65万円
ずばり出産手当金の金額は「給料の2ヶ月分+αくらい」です。
産休期間を丸っと休むと、このくらい出産手当金としてもらえると思ってください。
思ったよりもらえそうで良かった
例えば月給30万円(保険料や税金を引く前の数字。残業代など込み)の方なら、65万円くらいになります。
もちろん産休として休む期間が減る場合は、もっと金額が少なくなります。
【出産手当金の正しい計算方法】よくある誤解も解説
ここでは出産手当金の正しい計算方法を、よくある誤解と合わせて解説していきます。
- 正しい計算方法(専門用語あり)
- 誤解+専門用語の解説
- 正しい計算方法の詳細を解説
の3ステップで解説します。
①出産手当金の正しい計算方法|専門用語あり
出産手当金の正式な計算方法は以下の通り。
1日当たりの金額
【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
引用元:全国健康保険協会-Q3:出産手当金は、1日につきいくら支給されますか?
これが1日あたりの金額になるので、あとは産休日数をかけ算すれば出産手当金の金額が出てきます。
なんか難しい表現が多くてよくわからない・・・
解説していくので、今はピンと来なくてOKです
②標準報酬月額とは?|「産休前12ヶ月の給料を見る」は誤解
出産手当金の計算で誤解される方が多いのが「産休前12ヶ月分の給料を見る」というもの
だから・・・
産休前に休んだりすると出産手当金が減る
↓
体調悪いけど出勤する
という選択を取る方が現れます。
実際は産休前の給料を見ないので、直前で休んでいても変わりません
え?でも「標準報酬月額」って給料の金額じゃないの?
出産手当金の計算式の中に「標準報酬月額」という専門用語が出てきます。
「標準報酬月額」を出産手当金を気にしている方向けにひと言で説明すると「自動的に決められる、健康保険のかけ金」です。
普通の生命保険や自動車保険なんかでも・・・
- 月々や年間のかけ金を決める
- なにか不幸が起きる
- 「かけ金×数パーセント」みたいな計算で金額を出す
- 保険からお金がもらえる
という仕組みがあります。
出産手当金も同じで、健康保険としてのかけ金(標準報酬月額)を決めて「かけ金×数パーセント」で金額を出し、出産手当金としてお金をもらえる仕組みです。
ただし普通の生命保険や自動車保険と違う点として、かけ金が自動的に決まるという性質があります。
出産手当金のかけ金(標準報酬月額)は自動的に決まります
このかけ金(標準報酬月額)は、原則として年に1回の変更があり、そこで年間の金額が決まります。
どうやって決まるのか?それは「4,5,6月にもらう給料の金額」で決まります。
逆にいうと、4,5,6月以外の月の給料は関係ありません。高くても安くても。極端な話し0円でも関係ありません。
例えば4,5,6月の給料が30万円ずつなら、標準報酬月額は30万円になります。7月以降に残業の増減などで25万や40万になっても標準報酬月額は30万円のまま変わりません。
じゃあ妊娠したら4,5,6月だけ残業とかがんばってみようかな!
いや、それも実はほとんど関係ないので、最初に書いた結論の通り「産休前12ヶ月の給料を見る」という認識は誤解なんです
たしかにかけ金(標準報酬月額)は4,5,6月の給料で決まりますが、反映されるのは9月からなんです。結構、間が空きますよね。
一般的に、妊娠判明から出産までは10ヶ月。産休は出産の1ヶ月半前から始まるので、妊娠判明から約8ヶ月半後(妊娠34週)に休み始めます。
例えば2020年1月上旬に妊娠判明した場合・・・
- 出産予定日は2020年11月ごろ
- 産休開始は2020年9月から10月ごろ
- 2019年11月~2020年10月ごろのかけ金(標準報酬月額)で計算
- 2019年11月~2020年10月ごろのかけ金の大半は、2019年4,5,6月の給料で決まる
ってわけで、産休開始の1年半くらい前の給料。妊娠判明の半年くらい前の給料の金額で、出産手当金の金額が決まります。
妊娠判明した月によって出産手当金にどのくらい影響があるかは変わります。ただ、どんなケースだったとしても「妊娠判明後の給料はほぼ影響がない」ということは変わりません。
ポイント
- 結論、産休直前に休んでても関係ない
- 標準報酬月額とは「自動的に決められる、健康保険のかけ金」
- かけ金(標準報酬月額)は毎年4,5,6月の給料で自動的に決められる
- かけ金(標準報酬月額)は一度決まったら、次の年まで原則変わらない
- タイミング的に、妊娠判明前の給料で出産手当金の金額が決まる
③出産手当金の正しい計算方法|詳細を解説
よくある誤解を解説した上で、もう一度冒頭にお伝えした正式な計算方法を見てみます。
1日当たりの金額
【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
引用元:全国健康保険協会-Q3:出産手当金は、1日につきいくら支給されますか?
これが1日あたりの金額になるので、あとは産休日数をかけ算すれば出産手当金の金額が出てきます。
分かりやすいように式を分割すると・・・
- 支給開始日の以前12ヶ月間の
- 各標準報酬月額を平均した額
- ÷30日
- ×(2/3)
- ×産休日数
①|支給開始日の以前12ヶ月間
支給開始日っていうのは、産休開始日と言い換えてOKです。
なので簡単な表現にすると「産休開始前12ヶ月間」になります。
②|各標準報酬月額を平均した額
標準報酬月額については先に解説をした通りですが、改めておさらいします。
標準報酬月額とは以下の通り。
- 標準報酬月額とは「自動的に決められる、健康保険のかけ金」
- 毎年4,5,6月の給料で自動的に決まる
- 反映されるのは毎年9月
- 一度決まったら、次の年まで原則変わらない
つまり、4,5,6月の給料が30万円だったら標準報酬月額は30万円。7月が40万になろうと、3月が25万であろうと、標準報酬月額は30万円です。
「各標準報酬月額を平均した額」ってことは、12ヶ月間の標準報酬月額の合計を12で割れば良いですね。
例えば「産休開始前12ヶ月」というのが、1月~12月の場合・・・
- 1月~8月までの標準報酬月額は30万円とする
- 9月~12月までの標準報酬月額は34万円とする
- 合計すると30万×8か月+34万×4ヶ月=376万
- 平均すると376万÷12か月=約31万
というわけで、各標準報酬月額を平均した額は約31万円になります。
ポイントは、4,5,6月の給料以外は40万だろうと25万だろうと0円だろうと、各標準報酬月額の平均は約31万円というところですね。
繰り返しますが、産休前につわり等で欠勤が続いても標準報酬月額は変わりません
③|÷30日
「÷30日」っていうのは、標準報酬月額を1日辺りの金額に置き換える計算を意味しています。
31日の月や28日の月もありますが、そこは一律30日として計算するわけですね。
④|×(2/3)
「×(2/3)」というのは、いわゆる給付率を意味しています。
「給料丸々を保証するのではなく、約3分の2を保証しますよ」って意味で、3分の2をかけ算しているわけですね。
⑤|×産休日数
最後に産休日数をかけ算すれば、出産手当金の金額が出てきます。
予定日通りに出産+産休取得とした場合、産休日数は98日。実際は出産日がズレたり産休を取らずに数日働く人もいるので、多少前後することが多いです。
産休日数を簡単にいうと、出産の6週前から出産の8週後の期間です
改めて元の計算式を使って解説
元の計算式をかみ砕いた結果を使って表現します。
1日当たりの金額
【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
引用元:全国健康保険協会-Q3:出産手当金は、1日につきいくら支給されますか?
- 支給開始日の以前12ヶ月間の
⇒産休開始前の12ヶ月間の - 各標準報酬月額を
⇒月々の標準報酬月額。とはいえ、毎月の標準報酬月額はほぼ同じ - ÷30日
⇒1日分の金額を算出する意味 - ×(2/3)
⇒給付率3分の2の意味 - ×産休日数
⇒予定通り出産+産休取得なら98日
例えば、①~④の計算結果が5,000円なら出産手当金の金額は5,000円×98日=490,000円となります。
「各標準報酬月額を」のところだけピンと来にくいかもしれませんが、先に解説したように妊娠判明後の給与はほぼ影響ありません。
【出産手当金の金額】増えるケース、減るケース
増えるケース、減るケースはほぼ無い
先の計算方法を見ていただいた方はわかるかもしれませんが、妊娠判明後に出産手当金の金額を増やそうとしても、ほぼ変わりません。
残業をたくさんしても、出勤を増やしてもほぼ変わりません。逆に言うと、なにをしてもほぼ減らないということです。
出産手当金を気にして「体調悪くても出勤する」って方がいますが、無理しなくてOKです
育児休業給付金なら増えるケース減るケースがある
出産手当金はほぼ変わらないという結論でしたが、育児休業給付金であれば結構変わります。
特に「体調が悪いけど、欠勤だけはしないように無理して働いた方が良い」って考えの方は損をする可能性が高め。
「【育児休業給付金の裏ワザ】金額を増やす方法を専門家が解説(妊娠初期限定)」で解説していることを確認することをおすすめします。
簡単に概要を説明すると、育児休業給付金の場合も無理して出勤するのはNGで、休むべきときにガッツリ休んだ方が良いということになります。
出産手当金も育児休業給付金も、無理して働く意味はあんまり無いんだね
【よくある質問】累計1000件超の相談で対応した質問
産休前から休みに入った場合、出産手当金は多くもらえる?|もらえません
体調が悪くて産休前から休みに入ることってありますよね。これで出産手当金が多めにもらえるのか?という相談が来ます。
結論、多くもらえません。
例えば4月1日から産休開始なのに3月1日から休んだとしても、出産手当金は1か月分多くなりません
出産手当金は以下の計算で求められます。⑤の「×産休日数」のところが増えればその分出産手当金も増えそうな気がしますよね。
- 支給開始日の以前12ヶ月間の
⇒産休開始前の12ヶ月間の - 各標準報酬月額を
⇒月々の標準報酬月額。とはいえ、毎月の標準報酬月額はほぼ同じ - ÷30日
⇒1日分の金額を算出する意味 - ×(2/3)
⇒給付率3分の2の意味 - ×産休日数
⇒予定通り出産+産休取得なら98日
しかし、産休期間というのは法的に決められています。出産手当金は法的に決められた期間に休んだ分だけ給付される手当です。
なので法的な産休期間じゃないところで休んだとしても、出産手当金が余計にもらえることはありません。
じゃあ単純に給料が減っちゃうだけなのか・・・
でも出産手当金じゃない制度を使える場合があるよ!
ただ、休む理由や医師の判断結果によっては「傷病手当金」という形で出産手当金とは別にお金がもらえることもあります。
傷病手当金とは、骨折などのケガや病気によって仕事ができないとき、健康保険からもらえるお金のことです。
ざっくりした表現をすると・・・
- 出産手当金は産休によって仕事ができないとき
- 傷病手当金は産休以外で仕事ができないとき
という感じ。申請が必要なので、忘れずに対応しておきましょう。
申請は会社が行うのが一般的ですが、自分でやらなければならない方は全国健康保険協会(協会けんぽ)というとことが管轄になります。
有給休暇を使った方が得?|ケースによります
有給休暇が余ったから産休期間に使っても良い?という相談をよく受けます。
たしかにこれから約1年お休みを取るなら、有給休暇を使ってしまった方が得かもしれませんね(どっちみち産休育休期間中に消えてしまうため)
結論、今から産まれる子の産休育休のことだけ考えるなら、産休前に使ってしまえばOKです。
じゃあ産休前に使い切っちゃお!
ただ、第二子もすぐに検討しているなら少し注意
第二子を年子で計画してたり第一子の育休延長からの2歳差だったり、第一子育休の復帰から第二子までの間隔が短くなる場合は注意が必要。
第二子の育児休業給付金が減ってしまう可能性があります。
使う際のポイント以下の通り。
- 育児休業給付金の受給条件はクリアしている前提
- 給料の締め日までしっかり使うor10日以内程度にとどめておく
- 15日とか中途半端な使い方はしない
これなら第二子の育児休業給付金が減りにくくなります。
ちょっと複雑な取り方になるので、会社にもよく相談した上でやってみましょう
まとめ|標準報酬月額とは?よくある誤解も解説
- だいたい給料の2ヶ月分+αくらいもらえる
- 標準報酬月額は給料の金額ではない
- 「産休前12ヶ月の給料を見る」は誤解
- 妊娠判明後の給料はほぼ関係ない
- 出産手当金が増えたり減ったりするケースはほぼ無い
出産手当金がどんな計算で求められているのか解説しました。
誤解されている1番のポイントは「標準報酬月額」ですね。「標準報酬月額=給料の金額」って単純に考えてしまうと、産休前に休むと減ってしまうのでは?って誤解をまねきます。
出産手当金は金額の増減がほとんど無いので、あまり意識しなくてOKです
出産手当金とは違い、育児休業給付金は妊娠後の給料が大きく影響します。
知らずに給付金額を減らす行為をしてる方がいるので、「【育児休業給付金の裏ワザ】金額を増やす方法を専門家が解説(妊娠初期限定)」を見て、給付金が減らないように気を付けてください。